general

その他関連情報

Web連載 かとちえの短歌教室 【連載終了】
第5回目 かとちえの短歌教室 テーマは“涙”



<ご挨拶>
こんにちは、加藤千恵です。
春物のスカートを買おうと思っていたのに、
東京はもうすっかり夏ですね!
といっても、その前に、憂鬱な梅雨があるのですが。
梅雨時期はいつも、地元の北海道が恋しくなります。
北海道は梅雨がないので、それが当たり前だったけど、
実は恵まれた環境だったんですね……。
気を取り直して、
短歌を作る上でのワンポイントにいきたいと思います。

<句またがり>
句またがり、という言葉をご存知でしょうか。
もうとっくに知っている方や、
もしかしたら、言葉自体は知らなくても、
技法を知らないうちに使いこなしている方は多そうですが。
ここでも何度も言っているように、
短歌は「5・7・5・7・7」の音によって構成されているものです。
ここで、句またがりの例を出します。いずれもわたしの短歌です。
(1) 左手が/微妙な位置で/浮いたまま/なにも言えずに/くちづけをした
※『ハッピーアイスクリーム』(中公文庫)収録短歌
(2)デタラメな/英語で君が/歌ってる/ サンダルでペタ/ペタ音立てて
※『たぶん絶対』(マーブルトロン)収録短歌
(1)の短歌は、句またがりがないもので、
(2)の短歌は、4句から5句にかけて、句またがりがあります。
つまり、句またがりとは、
言葉の切れ目と、句の切れ目が異なっているもの。
字数的には「5・7・5・7・7」(あるいはそれに近い数)であっても、
意味で区切ると、定型どおりにならないことをいいます。
短歌をはじめて作る場合、文字数にとらわれがちです。
5文字の言葉、7文字の言葉、と探しがちですが、
句またがりをうまく使いこなせるようになれば、
表現の幅はもっと広がると思います。
もしよかったら、句またがりの短歌にも、挑戦してみてください。
ただやっぱり、句またがりがないもののほうが、
聴きやすい短歌になる傾向があるのも、確かなんですが。
なので多用するのは、あまりおすすめできません。


<今月の作品>

 ~第5回テーマ「涙」~
それでは、今回気になった作品を紹介します。
( )内が投稿者のお名前(ペンネーム)です。

実は今回のテーマ「涙」は、過去最高の投稿数でした! ありがとうございます。
もちろん全て読ませていただきました。
レベルが高くて、悩むのに苦労しちゃいました。
紹介しきれなかった中にも、いいなと思うもの、いくつもありましたので、
今回選ばれなかった方も、また投稿していただければと思います。



カラカラになってしまった僕たちがまた泣くためのポカリスエット (岩崎圭司)
 
 そのままポカリのCMキャッチコピーにしてほしいです!
 とても完成度の高い作品ですね。
 泣くため、という発想も出そうで出ないものだと思います。




映画など人の事では涙する君を私で泣かせたいのに(伊藤)

 内容的におもしろさを感じましたが、
 まだもう少し推敲できる気がします。
 漢字表記が少し多すぎるのではないでしょうか。
 「涙する」という言い回しも含め、なんだかちょっと堅い印象です。



 
もしもまだあなたに出会う前だったらこんなことでは泣かないのにな (亜弥)

 大きな欠点はないのですが、
 ちょっとまとまりすぎちゃっている印象です。
 「もしもまだ」とか「こんなこと」とか、
 漠然としているものではなく、
 具体性を入れると、さらによくなる気がします。



 
実験のような気持ちで友達を泣かせてしまった 息が出来ない (hannah)

 すごく完成度の高い作品だと思います。
 あえて難を言うならば、最後の「息が出来ない」部分を、
 ストレートに言うのではなく、
 もっと別の言い方で表現できたなら、もっとよかったかもしれません。
 悲しい気持ちを、「悲しい」と書くのではなく、
 たとえば情景描写で表現するような。
 ものすごく高レベルな要求なんですが。




拭ったらおわりになるのがわかるからもうちょっとだけ泣いててもいいかな
(さかいたつろう)

 最後の字余りがちょっともったいないような。
 あと、「泣いてても」という言葉は使わない方がよかったと思います。
 最初の「拭ったら」で、涙を喚起させておくという部分が、
 すごくいいので、そのやり方で最後までいってほしかったです。




Tシャツが色落ちするほど止まらない涙が夢オチだったらいいな (野々路育葉)

 「色落ち」「夢オチ」で掛けているんですね。
 このままでもおもしろいですが、
 「夢オチ」という言葉で終わるようにしたほうが、
 より強調されて、おもしろくなるのではないでしょうか。
 語順や言い回しを変えてみるなどして、いろいろ試してみてください。




あの人と一緒にいると泣き笑いみたいな顔になっちゃう 何で? (遠藤しなもん)

 それは恋……!
 可愛らしくまとまっている短歌ですが、
 反面、すぐに読み流してしまう印象もあります。
 「泣き笑い」を、自分なりの言い方で表現するなどして、
 どこか一箇所、ひっかかりを作れるといいと思います。




瞳からあふれる生理食塩水 泣けばいいとは思っていない (音無)

 前回(第4回・テーマ「母」)で紹介させていただいた歌同様に、
 少し奇妙な印象を与える、
 おもしろい短歌だと思います。
 ただ、「瞳」という言葉と「生理食塩水」という言葉のバランスが、
 少し悪い気もします。
 わざと堅い言葉(眼球、などでしょうか)を使って、
 上3句と下2句で、ギャップを出したほうがおもしろくなるのでは。



いつも、みなさんからの短歌を読ませていただく際には、
「ちょっと厳しめ」な姿勢を心がけているのですが、
今回はさらにそれが強かったかもしれません。
欠点を見つけ出すのに苦労する作品も多くて、
大変だったけど、嬉しかったです。
今後の作品も、楽しみに待ってます。


<今月のかとちえ賞>
選ばせていただいたのは、この作品です。

カラカラになってしまった僕たちがまた泣くためのポカリスエット

岩崎圭司さん、おめでとうございます!!
キャッチフレーズ短歌というジャンルの確立、
期待しています!


今月のかとちえ短歌
冒頭で触れた「句またがり」を用いています。

泣く理由なら何個でも浮かぶけどどれも決定打にはならない
(加藤千恵)


<次のテーマ>

今日からは、「飲み物」というテーマで短歌を募集します!
飲み物、という言葉を使ってもいいし、
今回の岩崎圭司さんの短歌のように、
飲料の固有名詞が入っているものでももちろんOKです。
あるいは言葉がなくても、飲み物を喚起させるような短歌であれば。
以下、募集要項です。

7月10日締め切りで、一人2首以内、テーマ記載の上、
ペンネームがある場合はペンネームも添えて。
→送り先:tanka_57577@3anet.co.jp(第二出版部かとちえ短歌教室係まで。アドレスの「@」を半角に修正してお送りください)

どうぞよろしくお願いします!