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Web連載 かとちえの短歌色物語 【連載終了】
第1回 かとちえの短歌色物語 テーマは“白磁”

<ご挨拶>
こんにちは。加藤千恵です。

みなさん、寒いですが風邪などひいていませんか?
アンコール連載を喜んでくださる声が多く、わたしとしても、すごく嬉しいです。

四回という限りはありますが、頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

さて、Oさんからのメッセージで、「もうすぐバレンタインですね。 千恵さんがどのように過ごされたのか、気になります」
とあったので、お答えします。

おいしいチョコを食べたり、「チョコレイト・ディスコ」が入ったPerfumeのアルバム『GAME』を聴いたりして過ごしました。
気にするほどの内容じゃなく、ほんとにすみません。

チョコを選ぶのが楽しいので、バレンタインは大好きです。
最近は自分用にも買うようになりました。チョコ大好き。
バレンタイン前後、会う人会う人に、チョコをあげています。

友だちが以前、「愛を安売りするみたいだから義理チョコはあげたくない」
と言っていて、それを聞きながら、「だとすれば、わたしの愛って、もはや価格破壊……」と思いました。

バレンタイン、甘酸っぱさとかドキドキとか、あんまりそういう思い出はなく、
多分これからも、チョコを食べたり、いろんな人にあげたりする日としての認識です。

みなさんは、楽しいバレンタインを過ごされたのでしょうか。
そしてYちゃん、滑り止め合格とのことで、おめでとうございます!
そういう時期なのですね。

では、作品にうつりたいと思います。

<今月の作品> ~第1回テーマ「白磁」~


  数千年経っても

 わたしたちはいろんな場所に行った。

いろんな場所で手をつなぎ、いろんな場所でキスをした。映画館、タイ料理屋、公園、プラネタリウム、駅の階段。

 わたしたちはたくさん旅行した。国内も海外も。いろんなものを見て、いろんなものを食べて、いろんなものに笑い合った。

 わたしたちは無敵だった。相手のことが大好きで、相手もまた自分のことが大好きなのだと知っていた。

できないことなどないように思えていた。

 過ごした日々の長さや、共有したものの多さは、すなわち思い出の多さだ。

忘れたいけど忘れられないもの。けれどやっぱり忘れたくないもの。

 沖縄に行ったのは、ちょうど今くらいの季節だった。泳ぐことはできなかったけれど、想像以上にあたたかかった。

夜にホテルを出て、人のいない海岸を散歩しながらも、あったかいね、と繰り返し言い合っていた。

 海岸で、手をつないだまま並んで腰かけた。さらさらの白い砂が手に触れる。

さらさらさーらー、と彼が歌うみたいに言って、変な歌、とわたしが笑った。

「星すごいよ」

 言われて空を見た。

「すごい」

 わたしの口からこぼれたのは、そんな短い言葉だった。

思わず息をのんでしまうほど、綺麗な星空が広がっていた。

こんなにたくさんの星を見たのは、生まれてはじめてのことだった。

彼の手を、さっきよりも強く握った。わたしたちは、そのまましばらく黙って、星空を見ていた。

「あそこ、ケーキに見えてきた」

「え、どこ?」

「あっちのほう。ほら、大きく光ってるのが苺で」

 彼の指さす先を、頑張って辿った。詳しく説明されて、ようやく理解する。

確かにケーキに見えなくもない。そう伝えると、どこか得意げな様子で彼が言った。

「あれ、数千年後には、ケーキ座って呼ばれてるだろうな」

「そんなわけないじゃん」

 すばやく突っ込んで笑った。

「いや。しし座とか蠍座とかもきっとこういう感じで発見されたんだよ」

 彼の言葉を、はいはい、と流した。けれど、本当にそうかもしれないと思った。

数千年前のカップルも、どこかで、こんなふうに言い合っていたのかもしれない。

見えるとか見えないとか。だとしたらすごい。わたしたちは、どちらからともなく、キスをしてから立ち上がった。

 旅行の最終日、おみやげ屋で、会社に持っていくお菓子を買った彼が、店員にプレゼントをもらった。

小さなボトルに入った、白い砂だ。

小さな貝も一緒に入っている。お店を出てから、彼がわたしにくれた。

ありがとうと言って受け取りながら、わたしは一緒に見た星空のことを思い出していた。

ケーキ座、と彼が言った。同じことを考えていたんだなと思うと、笑ってしまった。

 あの小さなボトルは、どこにいってしまったのだろう。

もうとっくに無敵ではなくなったわたしは、そんなことばかり考えている。

あんなに優しく抱きしめてくれた人を、わたしは他に知らない。きっと、一生。

その砂はどこにいったかわからない 星を見るたび思い出すのに
(MOMO)





<今月の優秀作>


「白磁」、難しいというご意見が多かったですが、すごくレベルが高く、選ぶのに苦労してしまいました。
用いるものもさまざまで、みなさんのイメージを垣間見れたようで、面白かったです。

口惜しい思いは白く濁り酒 まっすぐ生きてられない人だ(宇津つよし)
 中年の哀愁が漂う短歌のように読みましたが、どうでしょうか。

大切なことが聞けずに降り積もる真っ白な嘘すべてをおおう(月下燕)
 真っ赤じゃなく真っ白というところがポイントですね。

修正液みたいなフォローをしたせいでそこだけ逆に目立ってしまった(さかいたつろう)
 最後まで、作品化しようかどうか迷った歌です。とてもうまいと思います。

さよならに今夜うかがいます指輪返しに行きます雪女です(こゆり)
 結末の飛躍に驚きましたが、このまとまり方はすごいと思います。

どちらかを選ぶことなどできなくて白いふわふわ白いさらさら(夏実麦太朗)
 具体性の薄さが、かえっていろいろ想像させますね。綺麗な歌ですね。

これはもうきっと吹雪になるだろう最後の一文冷凍される(西野明日香)
 別れの情景なのでしょうか。一文ということは、声ではなくメール?

カーテンのむこうにまさかの大雪を眺めているかのように動けない(伊藤真也)
 実際に降っているように思わせておいて、比喩なのですね。うまいです。

君の吐く息だけ宙に消えていく白い景色に溶け込んでいく(クマクマ)
 歌詞の一節にもなりそうですね。綺麗にまとまっていると思います。

新築のモデルルームを見に行くの ひとりで行くのひとりだから行くの(なつこ)
 多少字余りになっていますが、むしろそこに、強い思いを感じさせました。

剥がされたポスターの跡眺めてる 忘れるのには時間がかかる(キタパラアサメ)
 引っ越していったのでしょうか。背景にある物語を、いろいろ想像させますね。

乳脂肪3,6の牛乳が脳にもこぼれだした「もういい」(ろくもじ)
 すごく詩的だと思いました。それでいて抽象的になりすぎていない感じが。

間違えて油性インクで書いてあるホワイトボードの消えない記憶(ウクレレ)
 視点がいいと思いました。実際にありそうだし、心情の比喩としても使えますね。

守れないのはふたりともわかってるわたがしみたいな約束をした(ゆず)
 ひらがなが多く、柔らかい印象を残す歌ですね。

甘くないケーキにかける粉砂糖みたいにいうね 怒らないでね(岡本雅哉)
 思わず笑ってしまいました。比喩が的確ですね。


<次回テーマ&かとちえ短歌>


「かとちえの短歌色物語」では、毎回、ある色(日本の伝統色)をテーマとした短歌を募集しています。
次回のテーマは、「桜色」です。色の詳細は下記サイトをご参照くださいね。
http://www.colordic.org/colorsample/2281.html

桜色という言葉を使わなければいけないということではなく、その色とイメージが結びつくような短歌を募集します。
その色の物体ということでもいいですし、抽象的なものでも、イメージからずれていなければ大丈夫です。
以下は募集要項です。
3月25日締め切りで、一人2首以内、テーマ記載の上、
ペンネームがある場合はペンネームも添えて。発表は4月25日となります。
今回から、締め切り日が変更になってますので、お気をつけください!
→送り先:tanka_57577@3anet.co.jp(第二出版部「かとちえの短歌色物語」係まで。
アドレスの「@」を半角に修正してお送りください)
そして、以下、桜色をテーマに詠んだわたしの作品です。

 

いつだって桜は綺麗 もう二度と愛し合えない人と見たって


(加藤千恵)