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Web連載 かとちえの短歌ストーリー 【連載終了】
第7回 かとちえの短歌ストーリー テーマは“ファミレス”


<ご挨拶>
こんにちは、加藤千恵です。

夏―!(はやってるという話は聞きませんが、とりあえず夏の間は使い続けます)

今回、ファミレス短歌を募集した際、いただいたメッセージの中に、
「かとちえ師匠はどこのファミレスファンですか??」というご質問が
ありました。

いつのまにわたしに弟子がいたのだろう、という疑問はさておき、お答えします。

「びっくりドンキー」です。

ファミレス界に敵なし、ダントツです。
というか、ファミレスに限らず、好きな飲食店、というテーマでも、
かなり上位にランクインしそうなくらいの勢いで好きです。
毎日でも食べたいです。

ちなみに注文の内容は、高確率で、チーズバーグディッシュ(150グラム)とメリーゴーランドです。
しかし東京23区内にはあんまりないんですよねー。悲しい。

ここをご覧のびっくりドンキー関係者の皆さんは、
ぜひ都内出店を検討していただきたいです。通います。

なんなら300グラム食べます。

<今月の作品> ~第7回テーマ「ファミレス」~


  ドリンクバーで

 来週のゼミで発表をすることになっているのは、わたしを含め、男女四人のグループだ。

男ニ名、女二名と、バランスはばっちりだけど、全然甘い雰囲気なんて生まれないまま、図書館で黙々とプリントを作った。

コピーした紙の切り貼りや、いくつかの現代語訳を見比べて違いを探すという作業を、

もういいかげん投げ出したくなった頃になって、図書館の閉館時間が来た。

半分ちょっとしか進まなかったけど、しょうがないね、明日からまた頑張ろう、とお互いを励まし合いつつ、図書館を出る。

 出てすぐに解散かと思いきや、一人の男の子が、超腹へったんだけど、誰か何か食っていかない、と言い出した。

言われた途端、自分がひどく空腹なことに気づいた。

結局、バイトがあるというもう一人の男の子を除き、三人でごはんを食べに行くことになった。

先頭となったのは、言い出しっぺの男の子だ。

何も言わずに後ろを歩いていく途中で、あれ、もしかしてこの道って、と思い始めたけれど、確認するのも不自然なので、ただただ歩く。

着いたお店は、案の定ファミレスで、口には出さずに、あっちゃー、と思った。

 こないだ別れたばかりの彼との、思い出積もりまくり、っていうか付き合いだしたのも別れ話になったのもこの店内でのことだ。

大学から一番近いファミレスだし、確かに無理もないけれど、まさかこんなに早いうちに、

再び足を踏み入れることになろうとは。というか、店ごと封印したいくらいなんですけど、

などと、やっぱり口には出さない思いが、どんどん頭の中で積もっていく。

 何気ない顔をしながら、何気ない声で、何気なくドリンクバーとシーフードのパスタを注文した。

注文を取りに来たバイトの女の子は、もう何度も見かけたことのある子だったけれど、そんなことはおくびにも出さずに、

ここには初めて来た客であるかのようにいた。

「ドリンクバーは、あちらのグラスをお使いください」

 というその女の子の言葉に、知ってるよ、と思いながらもうなずき、さっそく他の二人と一緒にドリンクを取りに行った。

すっかり見慣れたドリンクバー。

悩む前に、体が動く感じだ。グラスを持って、席へと戻る。

 遅れて戻ってきた二人と、注文した食事を待ちながら、ゼミの話や大学の話をする。

男の子が松浪くんという名前であることを、ようやく認識したけれど、何度も松田くんと言ってしまい、

本人にはもちろん、隣に座るめぐちゃんにまで笑ってつっこまれてしまう。

 思い出深い店にいるせいか、あるいはあまり話したことのない人たちといるせいか、やけに喉が渇く。

何度目かのドリンクバーから戻ってきたとき、めぐちゃんに聞かれた。

「コーラ、好きなの?」

「え、普通かな。なんで?」

「さっきからずっとコーラじゃん」

 言われて、自分がコーラを飲み続けていることに気づいた。最初から今まで、コーラ以外のものを飲んでない。

 この店に彼と来るときはいつも、ドリンクバーは一つだけ頼み、一つのコップを使って、二人で飲んだ。

絶対ばれないから、という彼の言葉どおり、確かに店員に注意されたことはなかった。そして、彼が飲むのはきまってコーラだった。

たまにはコーラ以外にしようよと言って、別の飲み物を持ってきても、次は結局コーラを飲むことになる。

そのうちに、わたしのほうが折れて、ここでは常にコーラを飲むようになった。

そのうちに、グラスに氷を入れて、コーラのボタンを選ぶのが、あまりに当たり前の動作として身についていたのだ。

そのことに、ようやく気づいた。

「ほんとだ。ずっと、コーラだったね」

 わたしの言葉に、二人が笑う。天然なんだねー、と言われて、わたしも笑うよりほかない。

見たことのあるバイトの男の子が、このテーブルにパスタ皿を持ってくるのを横目で確認しながら、今日何杯目かのコーラを口に入れた。

涙した水分を取り戻すように17回目のコーラをおかわり
(帖あやこ)





<今月の優秀作>


前回のプールに続き、
実は今回も、最多投稿数を更新いたしました!

たくさんの短歌やメッセージをありがとうございます。
今回選ばせていただいた作品を紹介します。

いいように使われてるなジョナサンのドリンクバーのグラスか俺は(辻井竜一)
 ノリツッコミ感がいいですね。比喩もいいところ突いてると思います。

どこにもいけなくて でもはなれたくなくて 朝メニュー出るまでここで(クサカベミカ)
 不思議なリズム感ですね。上3句は、だいぶ共感性が高そうです。

特に好きでもない人と特においしくもない茶を飲むために行く(トヨタエリ)
 ファミレスのポジションを、うまく表現できていると思いました。

お代わりのコーヒーのこと?僕のこと?「もういいや」って顔も上げずに(岡本雅哉)
 相変わらずのうまさですね! 確かに、どっちのことなのか、激しく気になります。

今にもほら泣き出しそうな雲抱え君と僕避難するファミレスに(西野明日香)
 普通に雨宿りかと思ったのですが、雲を「抱え」ということは暗喩? 
シチュエーションが気になりました。

飲み残しの紅茶みたいにさっきまで君の座った席が冷えてく(小埜マコト)
 上手いなあと思わせる一首でした。感情を表す言葉は入っていないのに、気持ちがすごく伝わります。

ファミレスで星座の名前を言い合った午後十時から朝の五時まで(壬生キヨム)
 七時間って! よっぽどの星座好きでしょうか。あるいは比喩かもしれないですね。

あの男にもキスをしたファミレスのような女だ お前が好きだ(たから) 
 予想外の結句でした。

デニーズもすかいらーくも無い町の真夜中 僕らはブランコを漕ぐ(都季)
 ファミレスがない、ということを詠んだ歌は珍しく、目を惹きました。

注文を繰り返すときひとつずつ相づちを打つきみが好きです(小野伊都子)
 なんだか、丁寧な人柄が表れてますね。わたしも店員さんに感じのいい男の人が好きです。

<次のテーマ&今月のかとちえ短歌>


ショートストーリーとなってから、
《ある場所でのシーン》を連想させる短歌を募集しておりますが、
今回の《ある場所》は、「橋」です。

橋、というか川が好きなので、個人的に楽しみなテーマだったりします。
以下は募集要項です。
9月10日締め切りで、一人2首以内、テーマ記載の上、
ペンネームがある場合はペンネームも添えて。
→送り先:tanka_57577@3anet.co.jp(第二出版部「かとちえの短歌ストーリー」係まで。
アドレスの「@」を半角に修正してお送りください)

そして、以下、橋をテーマに詠んだわたしの作品です。

上で川が好きとか言っときながら、歩道橋かよ、と思ったみなさん、すみません。
でも歩道橋もかなり好きです。

 

日本中の歩道橋を制覇したい 君と並んで景色を見たい


                              (加藤千恵)