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特別連載 日本語教科書活用講座① / アカデミック・スキルを身につけるために -『聴解・発表ワークブック』を使って-
第3回 質疑応答


講師紹介 犬飼康弘 財団法人 ひろしま国際センター研修部 日本語常勤講師
『アカデミック・スキルを身につける 聴解・発表ワークブック』著者



第3回 質疑応答


第1回、第2回で、「聞いてメモを取る」ことから「発表」の練習へという流れを紹介してきましたが、これは『聴解・発表ワークブック』の前半部の「基本練習編」に当たります。
この後、「応用練習編」に移るのですが、「基本練習編」との主な違いは、以下の通りです。
(1) メモはレジュメに取る
(2) 内容確認は質疑応答による
(3) 発表練習は、各自で設定したテーマによる発表を行ない、質疑応答もする

 

「応用練習編」は、まさに「基本練習編」で培ったスキルを応用していくことに焦点を当てています。
例えば、下の図のメモを見てみましょう。

本書第7課「少子化の原因」より
音声サンプルmp3 CD56~65(4分14秒) (3.88MB)


図1 「メモ」の実例 (本書第7課p99 学習者のメモ)


これは、第7課(「応用練習編」の最初の課になります)のレジュメに学習者が取ったメモです。

「基本練習編」で、メモを取る習慣が付いていますので、ここでもレジュメに無い情報や疑問点等をメモにとっていることが分かります。

また、メモの中に「still 低下」のような記述も見られ、「基本練習編」で培ったメモの技術が活かされていることも分かります。

さて、第1回では、「メモ1」から「メモ2」へと移行することで内容の確認を進めていきましたが、「応用練習編」では、下の図のような練習問題を使って確認していきます。

 

図2 第7課の内容確認問題 (本書p100より)


 

この内容確認の際に、例えば、「(1) 合計特殊出生率とは何ですか。簡単に説明してください」という問題に対して、「合計特殊出生率とは、一人の女性が生涯に産むと思われる子供の平均数のこと」のように回答を記入することも可能です。

しかし、それでは「聞いて書く」練習になってしまいます。

そこで、これらの問題を、実際に質問するように話してもらっています。

図3は、質問の仕方の例を示したものです。

 

図3 質問の仕方の例 (本書第7課p102より)


 

学習者は、このような質問の構成を参考に、図2に示したような問題を、別の学習者に実際に質問するように話します。

一方で、答える側の学習者は、例えば、図4のような回答の構成を参考に回答をしていきます。

図4は、「詳しい説明を求められた」場合の回答のパターンの例です(テキストにはこの他にも、「意見を求められた場合」のパターン、「反論された場合」のパターン、「回答できない場合」のパターン等が紹介されており、「質問の仕方」を含め、段階的に学習していきます)。

 

図4 回答の仕方の例 (本書第8課p110より)


この回答のパターンを参考にした場合、「回答」するだけでなく「補足説明」を加えた方が良いことが分かります。そう考えると、先に触れたような「合計特殊出生率とは、一人の女性が生涯に産むと思われる子供の平均数のこと」では回答として不十分となってしまいます。

そのため、「この合計特殊出走率は年々減少傾向にあり、日本の少子化問題が深刻化しています」あるいは「この合計特殊出生率を増加させるために様々な取り組みが行なわれましたが、減少に歯止めをかけることができませんでした」のような補足説明を加えることになるでしょう。

そして、例えば、前者のような補足説明をした場合、図2の(2)の問題にも同時に答えたことにもなります。

ゼミや学会での質疑応答時間は無限にあるわけではありません。一問一答式では、あっという間に時間が過ぎてしまい、せっかく重要な示唆を得られる機会をみすみす逃してしまうことにもなりかねません。そういった意味でも、上記で触れたような回答の形式を学習することは重要だと言えるでしょう。

そして、当然のことですが、質疑応答では、原稿を書く等の準備はできません(大きな学会の参加前であれば、想定問答を考えるかもしれませんが、それにしても予想外の質問はあるものです…)。

だからこそ、第2回でも触れましたが、原稿に頼ることなく話す練習を積んでおく必要があると考えています。

さて、第1回から、この第3回まででは、主に『聴解・発表ワークブック』を利用する部分について述べてきましたが、実は、授業をする上で個人的に最も重視しているのがフィードバックです。

そこで、最終回の第4回では、このフィードバックについて触れてみたいと思います。