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荒川教授の「とりあえず日本語」ブログ
第15回 コンミートの謎を解け!


勉強や書き物をしていると、
集中が途切れるので、机から離れたくないときがある。
でも、お腹は空く。こういう時は、サンドイッチレストランの登場だ。

このあいだは構文文法の本本が面白く、
でもお腹は空いたので、泣く泣くキッチンに下り、
コンビーフサンドを作ろうとした。
そこで前日にスーパーで買った缶詰のラベルを見て、びっくり目
ラベルには「コンビーフ」ではなく「コンミート」とあった。
どうやら馬肉の方が牛肉より多く入っているらしく、
こういう名前になったらしい(そういえばずいぶん安かった)。

で、その「コンミート」
この単語、ローマ字で打ってもカタカナ変換がされない。
まだ新語・造語のたぐいであって、日本語として認知はされていないようだ。

カタカナ語は新奇な感じがするけれど、
他の語といっしょになって複合語になることはごく普通だ。
たとえば「カード」という語を前に付ければ「カード決済」、
後につければ「ゴールドカード」、
中なら「クレジットカード会社」と、それぞれ複合語ができる。

ただ、コンビーフはちょっと事情が違う。
というのは、これは元の英語ですでに corned beef という複合語であって、
それがそのまま1語の外来語として日本語に入ってきたからだ。
言い換えれば「ビーフ」という外来語はあるけど
「コン」という外来語は日本語にはない。
1語のカタカナ語として落ち着いているものを
コンミート
の命名のために、形態素をもう一回バラしてしまっていいのだろうか?
例えは良くないけど、
なんだか仔犬犬の時に離れ離れになった柴犬の兄弟(コン君とビフ君)が
親切な飼い主を見つけ、仲良く暮らしていた矢先に、
とつぜんマンションに引っ越すので「やっぱり一匹しか飼えなくなっちゃったもうやだ~(悲しい顔)」と
兄弟を引き裂くようなものではないか(でもないか)。


特にコンビーフは、外来語としてはかなり古い。
なぜそう言えるのかというと、
英単語の音を聞いてそのまま書いた表記だからだ。

たとえば American という単語はスペリングで見て表記すると「アメリカン」だけど、
実際は「メリケン」のように聞こえる。
そして「メリケン」は「アメリカン」より古い。
今「メリケン粉」などと言う人は、相当のお年だろう。
もし知り合いに英語の母語話者がいたら corned beef を発音してもらうといい。
-ed の部分はほとんど無視されて「コーンドビーフ」のようには聞こえない。
やはり「コンビーフ」だ。

仮に corned beef が1980年代くらいに入ってきたことばだったらどうだろうか?
日本語にはすでにコーン (corn) が先輩の語として入っていたから、
その類推から corned beef は、間違いなく「コーンドビーフ」と呼ばれていただろう。
そしてそれだったら「コーンドミート」も許されたに違いない。
でも実際は、そうではない。
台形の缶詰に入った、細かな肉の固まりは、1語の安定した外来語「コンビーフ」だ。
いまさら兄弟仲を引き裂いて(妄想継続)
「コンミート」とか言われても、理解は難しい。
だけど、アレかな?
日本語は、複合語でない1語の外来語(たとえばエネルギー)だって、
平気で分割しちゃうんだから(省エネ・代エネ法案)、
コンポークくらいで驚いていられないのかもしれない。
さっきの例で言えば、一匹の仔犬を半身だけ飼おうとするようなものだ。


そんなことを考えながら、コンミートをマヨネーズで和えた。
軽く焼いたパンにコンミートをはさみ、
仔犬の兄弟の行く末を考えつつ、
2階の自室に上がり、
開きかけの構文文法の本本に戻ると、アレ?
ど、どこ、読んでたんだっけexclamation&question

 

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