ja

その他関連情報

荒川教授の「とりあえず日本語」ブログ
第16回 カタカナ語への気づき


今は大学からもらった特別研究期間の真っ最中で、
仮想世界における日本語のメタファー
という、日本語教育から離れたところを勉強している本

仮想世界とは簡単に言うと、コンピューターの中の世界だ。
だからコンピューターに関する文献を読んでいるのだが、
この分野にはとにかくカタカナ語が多い。
すると内容はともかく、
日本語におけるカタカナ語のありようについても興味が出てきて、
そちらも並行して読んでいる。
今回は、そちらの勉強からちょっと考えたこと。


外国語と日本語では、音の体系、つまり音韻が違う。
たとえば英単語 cut を日本語に入れると、katto のような音になる。
これをカタカナ表記すると、言うまでもなく「カット」になる。

この理屈を、僕はアルファベットを用いる英語や仏語だけに当てはまると思っていた。
でもよく考えると、中国語もまた、子音で終わる音は多い。
ということは、音読みと訓読みに関するルール
音読みとは漢字を字音で読むこと、または読んだもの
においても、日本語は勝手に母音を付け加える過程を経ていたことになる。
つまり、当時の中国語の音「そのまま」ではないということだ。

たとえば、「徳」の唐音は tok だけど、日本語に入れたときは toku になっている。
この分野の人には常識なのだろうけど、自分には再発見だった。


そういう音の改変は、もちろん言語間の差異に過ぎない。
逆に言えば、外国のことばに入った日本語だって、相当に変えられている。
国名の Japan だって、ニッポンの聞き間違えという説が有力だ。
仏文科で習ったけど、フランス語の「着物」はgimon だ。
これは文化の移動や出入りに伴う必然であって、相手への敬意の有り無しとか、
上下関係で語るものではない。
とはいえ、日本はかなり音をそのまま入れることに努力していると思う。


そこで、こんな例題で遊んでみる。
たとえば、ある大学の入試で、こんな世界史の問題が出たとしよう。


【問】以下の文中のカッコに正しい語を入れなさい。
①西暦800年に西ローマ帝国の王を称したフランク王国の国王は
(     )大帝である。
②スペイン・ハプスブルグ家の最後の国王は(     )2世である。
③フランス革命が起こると(     )10世は、イギリスへ亡命した。


答は①が「カール」、②が「カルロス」、③が「シャルル」だ。
もしも、①を「カルロス」と書いたら、もちろんバツ。
ところが英語の世界では、この3つはすべて Charles でまとめている。
これを英訳して、アメリカ人の世界史の先生に質問すれば、答えはすべて Charles になる。
明治期の開国以来、医学をドイツ、海事や船舶技術をイギリス、服飾はフランス、
などとさまざまなところから雑多に持ち込んだ結果が、こういうところに影響している。
良くも悪くも、日本文化の雑食性が現れていると思う。

さて、仮想世界のほうに戻るとしよう。
本年度も、どうぞよろしくお願いします。わーい(嬉しい顔)

 

荒川先生プロフィール