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特別連載 日本語教科書活用講座③ / 日本語、作文指導Q&A 『留学生のための ここが大切 文章表現のルール』
第2回 『ここが大切!留学生のための文章表現のルール』を使った授業例


講師紹介  筒井千絵 フェリス女学院大学講師 『ここが大切文章表現のルール』著者


留学生への日本語作文指導は現場の教師にとって難しいところのひとつではないでしょうか。
今回から4回にわたり『ここが大切!留学生のための文章表現のルール』の著者、筒井千絵先生に作文指導のQ&Aとして連載をお願いしました。




第2回 本書の授業での具体的な使い方
―第3部第10課「書き言葉らしさ」を例に― 

この課の目的
学習者の文章には、「~とか~とか」「すごく」といったくだけた話し言葉の表現がしばしば見られます。しかし、こうした表現を書き言葉で使うと、読者に幼稚な印象を与えてしまいます。この問題の背景には、初級では主に話し言葉が導入され、中級以降でも話し言葉と書き言葉の使い分けを意識する機会が少ないという現実があります。

そこで、この課では、話し言葉と書き言葉を区別するトレーニングを集中的に行います。

授業の流れ

1. まず、「問題」を解いてみる
2. 「問題」の答え合わせをしながら、解説をする
3. 「話し言葉」「書き言葉」の差が出やすい品詞について確認する
>4. 一文レベルの「練習」で理解の確認をする
5. 「発展」で力試しをする
6. 補足の練習案

1. まず、「問題」を解いてみる

課の冒頭の「問題」を、学習者にまず解いてもらいます。「問題」の文章の中には9つの「くだけた話し言葉」が含まれており、これを見つけ出して適切な表現に改めるのが課題です。この問題に取り組むことで、まず「話し言葉」と「書き言葉」についての気づきを促します。以下は問題文の一部です。

ダイエットのために朝ごはんを食べない人もいっぱいいるけど、あまりよい方法じゃないと思うよ。


答え いっぱい→たくさん けど→けれども/が じゃない→ではない 思うよ→思う




2. 「問題」の答え合わせをしながら、解説をする

問題を解き終わったら、次ページの「解答」を見て答え合わせをします。解説は次の「説明」にありますが、授業ではそれをそのまま読むのでなく、先生が学習者の理解に応じて口頭で説明したほうが効果的です。



たとえば、以下のように学習者の出した答えを活かすこともできます。

例1)「いっぱい」を「大勢」に変えた学習者がいた場合
…この場合は人が主語なので「大勢」はよい答えです。
ただ、 「いっぱいある」のように事物について言う場合は「大勢」は使えないことも同時に確認します。

例2)「朝ごはん」を「朝食」に変えた学習者がいた場合
…「朝ごはん」はそのままでも問題は少ないのですが、
だからこそ「朝食」という硬い表現への気づきが重要であることを強調します。
また、「朝食」に変えると、「食べない」も「とらない」に変える必要がある点に注意を喚起します。

「説明」には「問題」の文章中の表現を「話し言葉」「軟らかい書き言葉」「硬い書き言葉」の3段階に分類した表をつけていますが、余裕があれば、「問題」の文章を学習者自身で「硬い書き言葉」に書き直す練習をしてみてもよいでしょう。




3. 「話し言葉」「書き言葉」の差が出やすい品詞について確認する

「説明」では、副詞、接続詞、接続助詞、文末表現について「話し言葉」「書き言葉」に分類した表を載せていますが、授業では、「話し言葉」のみを提示し、「書き言葉」を学習者に考えてもらってもよいでしょう。

学習者は辞書で調べたり、知っている言葉を頭の中で検索したりして、積極的に意見を言ってくれますが、適当な言葉が出てこない場合は、類義語辞典(シソーラス)の活用を促すのも一つの方法でしょう。

たとえば、「どんどん」の書き言葉として、学習者が「急速に」でなく「次第に」「ますます」などを出してきた時、用法の違いの確認とともに、「徐々に」「一層」などの表現の導入もここで行うと、語彙を広げることができます。












4. 一文レベルの「練習」で理解の確認をする

「練習1」では、「話し言葉」を「書き言葉」に直す練習をします。

不自然な部分に下線がついており、比較的取り組みやすい問題です。
ここで理解の確認と定着をはかります。
答えが導き出せない場合は、ヒントを与えたり「説明」を参照させたりして手助けをしてあげてください。



次に、「練習2」では、「軟らかい書き言葉」を「硬い書き言葉」に直す練習をします。
辞書を使わせたり学習者同士で相談させたりしてもよいでしょう。

練習には多様な問題を入れてあります。以下のような場合には丁寧な解説が必要です。

例1)類義表現があり、学習者から異なる答えが複数出された場合

「(ミスを)直して→訂正して/修正して/改訂して など」

…第11課「辞書の危険性」とも関わりますが、辞書の例文や、ネット環境が整っていれば、コーパスの検索なども活用し、使い分けを考えてもらうのもよい練習です。

例2)単語を超えた訂正が必要な場合

「昨日起きた事故で死んだ人は1名、ケガをした人は5名に上った」

…「死んだ人→死亡者」とすると、「ケガをした人」も「負傷した人」でなく「負傷者」としたほうが、表現が揃います。
また、「死者」「負傷者」に変えると、前の「事故で」も名詞に接続する形に変えなければなりません。
学習者が「事故での」と変えられたら、「事故における」を紹介し、硬さを揃える指導をするとよいでしょう。

これらの練習を通して、単語だけでなく文全体を見て表現を選ぶ癖が身につきます。




5. 「発展」で力試しをする
「発展」では1文でなくまとまった文章の訂正を行います。


訂正部分も「子どもにインターネットを使わせない→児童/生徒にインターネットを使用させない(児童/生徒のインターネット使用を禁じる)」のような、文全体のまとまりも考えた練習になります。




6. 補足の練習案
テキストでは練習問題を多めに用意してありますが、それでもこれで完全に定着させられるわけではありません。
実際に文章を書きながら、そのつど気づきを促し、少しずつ適切な硬さの表現が選べるようにしていくことが必要です。

ただ、あまりにも間違いが目立つ場合には、再度同様の練習をしてみてもよいと思います。たとえば、新聞記事や新書の文章を参考に、教師が一部の表現を話し言葉にリライトし、それを学習者に書き言葉に書き換えてもらうという練習などです。

また、学習者の文章の問題点として、反対に、「電車の中で大声で話している人に苦言を呈したいです」のような文章中で浮いてしまう硬すぎる表現もあります。この場合、「硬い書き言葉」を「軟らかい書き言葉」に書き直す練習をしてもよいでしょう。
こうした練習を通じて、学習者は次第に、自分で文章を書く際も、文章の硬さに応じた適切な表現を選べるようになっていきます。