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日本語教材コースデザインひとくちメモ
中級への橋渡しで『新日本語の中級』


吉祥寺外国語学校 荒木真理子


吉祥寺外国語学校は、東京都武蔵野市にある民間の日本語学校で、世界約30カ国から、様々な学習目的を持った学生を受け入れています。学生の約半数が就学生、残り半数が就学生以外で、国・地域別構成は、約5~6割が韓国、2~3割が欧米諸国、残りがその他の国々からです。コースは、月曜から金曜までのグループクラスと、週1~5回のプライベートクラスが中心となっています。今回は、グループクラスでの『新日本語の中級』の使用例を紹介させていただきます。


【コース及びクラスの説明】

1)期間・学期・週・時間
1年が4学期に分かれ、学期ごとの時間数は約200時間です。クラスは月曜から金曜までの週5日間。1日4コマ(1コマ=45分)。
2)クラス編成
1クラスは平均10~15名。様々な目的、国籍、年齢の学生が集まっています。
3)レベル
初級から上級まで8レベル。『新日本語の中級』は、3段階目のレベルである中級1クラスで使用します。初級1、2のクラスで『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』の46課まで学習し、中級1クラスの最初の2週間で『みんなの日本語初級Ⅱ』を終え、残りの8週間で『新日本語の中級』を学習するカリキュラムになっています。中級2、3クラスでは、『テーマ別 中級から学ぶ日本語』(研究社)を使用しています。
当校では、初級から中級への橋渡し的な教材として、『新日本語の中級』を使用しています。初級で学んだ既習文型を整理・運用し、文型を会話に結びつけられるようになるため、そして当校は非漢字圏の学習者も多く、このレベルで500字レベルの漢字力をつけるためです。(漢字の教材は、『Basic Kanji Book vol.1,2』(凡人社)を使用しています。)

【コースデザイン/1課の流れ】

1課に平均5~7コマかかります。毎日30分程度の表記学習を取り入れながら、だいたい2~3日で1課が終了します。中級1レベルでは、テキストと表記学習以外にも、毎週2コマ~隔週2コマの頻度で、読解と作文のスキル別学習も行っています。

(1)学習項目の確認 (学習目標)

(2)テーマ導入 (学習する前に)

(3)新出語彙

(4)文型の導入と練習 (会話の練習)

(5)会話

(6)ロールプレイ (会話の活動)

(7)聴解練習 (聞こう)

(8)宿題

 

※『新日本語の中級』の使用は8週間のみなので、20課全課ではなく、学生のニーズに合わせ、3~5課分は抜いて使っています。また、「読もう」の部分も取り上げていません。読解練習は、毎週2コマの読解の時間に行います。「会話の練習」の文法事項についても、優先度や重要度を吟味した上、省略しているものがあります。

(1)「学習目標」学習項目の確認
最初に学習目標を読み、これから学習する課で、どんな場面でどういうことができるようになるかを確認します。第2課の「電話で連絡する」など、初級で学習したときに練習不足だったものが出てきたりすると、学生の反応もよくなります。
(2)「学習する前に」テーマ導入
該当課の練習の前に、テーマ導入として、「学習する前に」を使ってディスカッションをします。人数の多いクラスではペアで話した後に発表してクラス全体で共有したり、少ない クラスでは全員でディスカッションしたりします。身近な話題が多く発話しや すいため、どの課も盛り上がりますが、第12課の「比較する」、第14課の「褒 める・けんそんする」などでは国別の事情や日本との比較で、特に盛り上がり ます。
(3)新出語彙導入
分冊の語彙を使って、新出語彙の導入を行います。動詞なら辞書形やて形を導入したり、助詞と組み合わせた例文をあげたりして練習します。また、発音練習もかねて行っています。
(4)「会話の練習」文型の導入と練習
既習文型の確認、新しい中級前半文型、口語表現など様々なパターンの文型がありますが、いずれも各教師が工夫を凝らした導入および練習を行っています。テキストの練習だけでは足りないので、プリント等で練習量を増やすようにしています。また、単純なパターンプラクティスだけでなく、できるだけペアワークなど発話に結びつく活動なども取り入れています。導入と練習のためのプリントに、実用的で応用力のつくようなダイアログを作る練習を入れ、ペアで作らせ発表させることが多いです。第4課の会話の練習1では、文脈の「あ」「そ」を学習したとき、練習問題をこなした後で、自分の国の友だち(「そ」の人)を紹介する+クラスメイト(「あ」の人)の噂話をする、という活動を取り入れたことがありますが、身近な話題で発話が弾みました。
(5)「会話」
テープやビデオを利用して、学習した文型が実際の場面でどう使われているか確認し、イメージを広げます。発音やイントネーションなどにも注意し、自然な会話ができるよう練習します。
(6)「会話の活動」ロールプレイ
会話の後に活動をします。活動の多くは場面でのロールプレイです。会話の練習で学んだ文型や会話の進め方、口語表現などをうまくつなげて、場面にあった適切な会話を作ります。日常生活で遭遇する場面が多いので、学生たちは真剣にロールプレイに取り組みます。臨場感が出るように、小物(第5課「誘う・断る」で実際に情報誌などを使う)などを用意することもあります。会話を作った後は発表させ、文法や表現の間違いをフィードバックします。聞いている学生も、こういう表現もあったのか、と感心したり、クラスメイトの意外な面を見つけたり、新鮮な発見があるようです。
(7)「聞こう」聴解練習
課の最後に聴解練習をし、課で勉強した文法事項、表現などを確認します。ここまでの段階で、テーマについて繰り返しいろいろな角度から練習するため、基本的な事項がしっかりと定着します。
(8)宿題
1課が終わると、宿題を出します。宿題は当校が独自に作成したもので、A4両面の分量に、初級文型の復習と、その課で勉強した文型や語彙の問題、会話作りの問題などが入っています。口頭で作った会話を字で書かせることで、終助詞の使い方や活用のミスなど、細かい部分まで意識させることができます。
以上、当校での『新日本語の中級』の進め方を紹介させていただきました。漢字学習の並行とこのような学習を通して、読解中心の中級テキストに無理なく移行することを目指しています。そして、読解中心のテキストに移行した後も、ただ読み解くだけでなく、その社会的背景等も理解し、それらに対する自身の意見を表現できる下地も、身につけられればと考えています。また、様々な場面での適切な会話を身につけ、外国人という外部者ではなく、日本社会の一員として、気持ち良く生活していくことができるようになってほしいと考えています。

【2008年3月5日掲載】

*この原稿はスリーエーネットワーク教材図書目録2007年度版からの転載です。
*原稿内容、筆者のご所属につきましては、転載年当時になります。