ja

その他関連情報

特別連載 日本語教科書活用講座32 /『みんなの日本語初級 第2版 会話DVD』の活用-会話の授業とDVD-
『みんなの日本語初級 第2版 会話DVD』の活用-会話の授業とDVD-

JET日本語学校 主任教諭 山口閑子


『みんなの日本語初級第2版』の会話部分がDVDとして発行されました。
今までのDVDと基本的な会話の流れは変わりませんが、俳優が変わり、細かな部分の映像(公衆電話の場面や駅、電車の中の様子など)が変わったことにより、より実践的な「会話練習」が可能となったように思います。以前のものでは、着ている服を見るだけで一昔前のように感じ、「古いねえ・・・」と学生たちの間でも言われていました。

そこで、当校でのDVDの利用方法を紹介するとともに、さらなる活用方法について検討してみたいと思います。

当校ではDVDを、学習している課の最後に「会話」のところで利用しています。1課の進め方は、語彙、文型の導入、例文で確認、練習ABCで口頭練習と「書き」の練習。次に『クラス活動集101』などを使用してのコミュニカティブな練習。
その後に「会話」へと進みます。

DVDは常に全課で使用するわけではありませんが、場面を映像で見せることは会話練習において非常に効果的だと考えています。
例えば、会社の中の人間関係(ミラーさんと上司の関係、ミラーさんと管理人さんの関係)や言語以外の日本人のしぐさ(初対面の人とは握手しない、くつをそろえる)などを見ることができるのは、映像の大きな効果だと考えます。
特に最近増えている非漢字圏の学習者にとっては、膨大な漢字があるテキストから離れ、映像によって目と耳を使い、感覚的に日本語をとらえることができるのは、少し息の抜ける楽しい時間になっているように思います。


以下にDVD活用の一例をあげます。

①テキストは見ないで映像で場面を見せます。
 このとき会話部分の語彙導入は会話の流れを理解できるための最低限にしています。
②1~2回映像を見せた後、大まかな流れ、内容を教師の質問によって確認。
③テキストを見て細かい部分まで確認する。(重要な語彙や表現、文型の再確認)
④DVDの音声のあとについて、または、教師について音読練習。
⑤ペアを作るなどして学習者同士で音読練習。
⑥短い会話であれば暗記して発表。または会話のアレンジを作らせて発表。


すべての課でDVDを使っているわけではなく、学習している課によっては、CDを使用したり、教師が自ら演じてみたり、最終的にはDVDでアフレコを行ったりして、日本人の会話の息づかい、テンポなどを理解させ、学習者を飽きさせない工夫をしています。

発表の時に大事なことは、「大きな声で発表させる」「上手なアレンジについては他の学習者にも練習させる」「おもしろいアレンジも歓迎する」「行き過ぎたアレンジになり、未習の表現ばかり使いたがる学習者もいるため、注意が必要」ということです。
そして、何よりも教師自身が演じることを恥ずかしがることなく、楽しむことが大切だと考えます。これにより、クラスの雰囲気もよくなり、ここで覚えた文型や語彙、表現を日常でも使うようになります。


「会話」を楽しむためには、その課の学習項目をしっかりと理解している必要があります。導入時に使用場面のイメージを沸かせ、それを実践練習できるのが「会話」の部分になります。
「会話」に至るまでの繰り返し練習や、代入練習は単純でつまらないと感じることもありますが、これをしっかりとやることによって、楽しい「会話」の成功へとつながると思います。

当校での学習者のお気に入りは「初版」では「ほんの気持ちです」でした。「第2版」では、第8課の「そろそろ失礼します」や第13課の「別々にお願いします」などが印象深いようです。
また、第19課のダイエット話や第33課の駐車違反罰金の話では、学習者各自の国のことまで話が広がり、学習者同士の距離がぐっと近づきます。


今後のDVDの活用法としてもっと考えていきたいこととしては、2つあります。

ひとつは、この会話を利用して、できるだけ「細かい設定」をせずに自由なロールプレイを成立させられるように仕向けることです。このためには、練習のための練習にならないような配慮が必要です。
さらに、会話のはじまりや終わりが唐突すぎないようにするなど、いくつかのルールが必要になると考えています。

ふたつ目は、上述の第19課や第33課のように「会話」の内容を元にして、クラスで様々な意見交換ができるようにすることです。これは、初級レベルから中級レベルへつながる会話の活動と考えます。

最後に、私が考える学習者の初級の会話レベルと、レベルに応じた会話のクラスについて述べます。初級レベルの会話の中でもいくつかの段階があると思います。
第一段階としては『みんなの日本語初級』の第6課あたりまでです。まだ動詞も少なく、会話らしいことはできません。
しかし、教師の工夫次第で会話の楽しさを感じさせることはできると思います。この段階では「会話を楽しむこと」を教えます。


第2課の例 第2課の「会話」の流れと表現を利用
(ピンポン/とんとん)
A:はい。どなたですか。
B:○○クラスの△△です。
A:こんにちは。
B:こんにちは。これから よろしくお願いします。
  あのう、これは、□□です。どうぞ。
  (□□は教師が指定するか、ヒントを与える。もしくは学習者が自分で決める)
A:いえいえ。(困って、もらえないふりをする)
B:いえ、どうぞ。どうぞ。
A:え、そうですか。じゃ、ありがとうございます。

次の段階は動詞(第6課)と「て形」(第14課)が導入されたあたりです。語彙がぐっと増えて、言いたいことがかなり言えるようになってきます。
ナ形容詞(第8課、第9課)や希望表現(第13課)もあり、学習者の個人的な生活や考えについて話せるようになってきます。
クラス授業では、このあたりから異国間の学習者同士で日本語の会話が増えてきます。(多国籍のほうがおもしろいことが多い)


『みんなの日本語初級Ⅰ』が終わるころには、既習語彙、文型については、かなりの部分で受け答えができるようになってきます。
日本の生活にも慣れ、日本人の発話スピードや発音にも慣れて、もっともっと話したいと思うようになるころだと思います。

『みんなの日本語初級Ⅱ』に入ってくると抽象的な語彙、細かなニュアンスを伝える文型、表現も増え、それらを使うことは、そこで学習している課のみで精いっぱいというところです。
既習項目として、課をまたいで文型を使いこなすことが難しくなってきます。課ごとには理解していても、課を超えての発話がなかなかできません。
これらを使う練習は、初級が終わり、次のステップでの練習項目となっているのが現状です。

初級の終わりの段階としては、学習した項目については、かなり流暢に答えられるようになります。
ただし、学習した項目であってもちょっと質問の方法をかえたり、少し深い内容を聞いていくと、言い淀んでしまうことがあります。
最近感じていることは、この原因は、「日本語力」だけの問題ではないようにも思います。
少し深い内容の質問をしたときに「わかりません」という答えが多いのです。これは、彼ら学習者が、これまであまり深く考える機会に出会わなかったのではないかと感じています。

例えば「自国の社会問題」に答えられない学習者がいます。
さらには、初級で言えば「ミラーさんの夢」を聞いたあとで「自分の夢」について聞いても話せない学習者がいます。
我々は語学を教えていると思いがちですが、学習者に「考える」ということや「人間力を磨く」ということも伝えなくてはいけないのではないかと思い始めています。


以上となりますが、DVDの使用方法について、最後に一つオススメの利用法です。
通常は1課ごとに見せていますが、関連する部分がある場合は何課か続けて見せたり、学期の終わりには一気に25課分、50課分を見せて一つのドラマとして見せたりします。
それにより、登場人物のそれぞれの人生を見ることもでき、楽しむこともできます