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特別連載 日本語教科書活用講座35 /もっと知りたい『新完全マスター文法 日本語能力試験』授業のポイント
―「N3」レベルの授業例をご紹介―

『新完全マスター文法 日本語能力試験N3』著者 友松悦子



1.はじめに


日本語能力試験N3で出題される文法問題は、

●文の文法1(その文に適切に当てはまる文法形式を選ぶ問題)
●文の文法2(文を正しく組み立てる問題)
●文章の文法(文章の流れに合った適切な言葉を選ぶ問題)

の3種類です。『新完全マスター文法 日本語能力試験N3』は、試験に合わせて3つの問題形式別に学ぶ構成です。

今回は、第1部「文の文法1」のパートを中心に、50分授業2コマでの授業進行の例をご紹介します。
このパートでは、N3で出題されると思われる文法形式を、意味機能別に分けて少しずつ学習していきます。


2.文法形式(文型)の導入


第1部の各課では、まず、似たような意味機能の、既に知っている言い方にはどんなものがあったか、確認するところから始めましょう。

例えば、時に関する表現を学ぶ1課では、「時間に関係がある言い方にはどんなのがありましたっけ?」と声をかけます。
教師も手助けして、「~後で」「~てから」「~前に」「~ながら」「~まで・~までに」などを思い出してもらい、典型的な文を言ってみるなどの復習をしておくと効果的かもしれません。
N2、N1の学習でも同じように、前のレベルの文法知識を踏み台にして、その上にレベルアップした言い方を積み重ねるようにすれば、学習者も受け入れやすいでしょう。
N3では、まだ基礎知識が少ないですが、N5、N4レベルの文法知識をフル活用させましょう。
「今日は、今まで習った言い方に加えて、もう少し複雑な言い方を学習しましょう。」などと言って学習者を励まし、この日の学習項目に入ります。

1課では「~うちに…」、「~間…・~間に…」、「~てからでないと…・~てからでなければ…」、「~ところだ・~ところ(+助詞)…」の4項目を学習します。
あらかじめ学習項目を概観しておくといいでしょう。
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テキスト16-17ページ
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各文法形式の学習に取り組む際には、「短文の読解をする」という意識で、まず、例文をしっかり読みます。
難しめの語彙が含まれている文や、状況を説明する必要がある文もありますから、ある程度時間をかけて読むことが必要かもしれません。
ここで初めて出会う文法形式については、接続形や注意事項(「」で示してあるところ)を説明した上で、「前半が提示されている文の、後半の文を答える練習」またはその逆の練習をいくつか口頭で行い、理解ができたかどうか確認します。

」の部分の説明は慣れるまでは少し大変かもしれません。
でも、これをやっておくと、なぜ間違えたか、そして次はどうすれば間違えないかがわかるようになります。
N3レベルのテキストには英語、中国語訳(「ベトナム語版」にはベトナム語訳)がついていますから、訳の力を借りて理解を促しましょう。
説明のときにキーになる語は、「状態」「継続」「変化」「意志」「否定的(マイナス)」「書き言葉」など、あまり多くありません。
そして、このキーワードが、日本語の文法を考えるときの大きなヒントになるのです。

理解が早い学習者は、2,3課で文法問題のポイントがわかってきます。
慣れてくれば、先生の説明を聞かなくても、この接続の形と「」の解説を見返すだけで、どこが間違っていたかがわかるようになります。
実際にこの本を使った学習者から、「“問題を解いて、間違えたら前のページに戻る”を繰り返していたら、途中からコツをつかんで、どんどんスピードが上がり、文法がわかるようになってきた」という声を聞きました。

また、ここで大切なのは、語彙の扱いです。
本テキストでは(N2、N1も同じ)、当該のレベルで習得すべき語彙を使って例文を提示しています。
例文を理解することは語彙の学習にもつながるわけですが、授業で語彙の説明をしているとそちらの方にばかり時間を取られて、本来の文法学習が進みません。
学習する課の語彙を辞書などであらかじめ確認しておくことが必要です。学習者には、この予習が何より大切であることを強調してください。授業では50分で文法形式2~3項目進むのが理想です。


3.理解の確認と知識の整理


こうして1課分の文法形式の理解が終わったところで、2課ごとにつけられている「練習」の1課分をやってみます。
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テキスト20-21ページ
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この選択問題をやってみて間違えたところは、「」の説明をもう一度読むように促し、理解を固めるようにしましょう。

できればペアワーク、またはグループワークなどで答え合わせをするといいかもしれません。
お互いに答えを言い合って、話し合いをします。
教師はグループを回り、わかりにくい問題があれば、なぜ迷っているのかを聞き、考え方についてヒントを出すなどします。
その後クラスワークに移り、その時点で答えを発表してもらいます。
それから、質問を受けて、解説すると言った流れです。グループを回ったときに気になった点についても解説します。

または、進行係になる人にあらかじめ正しい答えを提示しておき、その人の進行のもとに答え合わせをします
「みなさん、今の答えは正しいですか」
「質問はありませんか」
「〇〇さん、もう一度注意のところを読んでみてください。……と書いてあるでしょう?」
などと進行係は得意になって「先生役」を演じてくれるかもしれません。
一見、能率が悪いように思えますが、先生は教える・説明する、学習者は教わる・説明を受けるという構図を崩してみるのもクラス活性化のための一つの方法だと思います。

「練習」の答え合わせを終えたら、1課の4つの学習項目が概ね理解できたとし、次にこれらの文法形式を使う発展練習を改めてやってみます。
文の前半を、あるいは後半を与えての短文完成練習、当該の文法形式を使って質問に答える練習、提示された状況で短文を作る練習などです。
ワークシートを使って書く練習を行ってもよいと思います。
(急ぎの場合はこの練習を宿題にして、次の課に進んでもいいでしょう。)


次の課も同じように学習を重ねます。
〔前のレベルの思い出し〕
  ↓
〔理解のための作業
 ①例文を読む
 ②意味機能・使用場面等の確認
 ③文法的ルールの確認
  ↓
「練習」(ルールの再確認)〕
  ↓
〔使えるようになるための練習(文完成、短作文など)〕

という流れです。


「練習」のページの後半には、2課分の学習項目をまとめて確認する問題がついています。
2課ずつ終えるごとにこの問題を宿題にし、次回の授業で答えを確認してから次の課に進みましょう。

4課ごとに総復習する「まとめ問題」もありますので、4課分の文型貯金ができたら、「まとめの問題」も宿題として課すのがいいかと思います。
これは実際の能力試験問題に倣った問題ですので、試験を受けるつもりで挑戦してみるように促しましょう。
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テキスト28-29ページ
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また、第1部の後半には、間違えやすい文法形式やこのレベルで習得すべき文法形式(助詞、助詞相当句、「こと」・「の」、「する」・「なる」、「よう」、「わけ」、「ばかり」など)の用法や使い分けの整理をするセクションもありますから、意味機能以外の面からもしっかり基礎固めをするとよいでしょう。
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テキスト80-81ページ
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テキスト82-83ページ
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4.おわりに


N2、N1でもほぼ同じ流れで学習と整理を行っていきます。
どのレベルでも要点は同じで、知っている文法形式を足掛かりにして深く奥へ進む、つまずいたらひとつ前のレベルに戻って、同じ意味機能の文法形式を確認しておく、そしてまた前に進む……。
時には後ろを振り返りながら、着実に歩みを進めていくのがいいと思います。