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特別連載 日本語教科書活用講座⑧ / 『みんなの日本語初級』を使った暗記テスト、シナリオプレイ
第1回 いきいきとした会話の授業のための教科書活用法①暗記テスト


学校法人石川学園 横浜デザイン学院 日本語学科 主任 佐久間みのり


私は横浜デザイン学院という専門学校の日本語学科で日本語を教えています。デザインの専門学校とはいっても、教えているのは日本語で、他の日本語学校とそれほど大きな違いはありません。中国、ネパール、インド、タイ、スウェーデンなど様々な国籍の学生が、専門学校への進学はもちろん、大学進学、大学院進学、それぞれ目的を持って日本語を勉強しています。専門学校の学科の専門性からか、日本のポップカルチャーや漫画・アニメに興味を持っている学生がとても多いという特徴もあります。

学科での日本語学習期間は1年・1年半・2年とありますが、日本語能力試験のレベルで言うとN1程度のレベルを目指して初級から勉強していきます。初級は『みんなの日本語初級』を使って授業を行っています。授業の流れとしてはだいたい、導入、練習Aで文型の確認、練習B(応用・発展練習含む)、練習C、例文、会話、課末問題という順番です。

導 入文型の導入
  ↓
練習A導入した文型の確認
  ↓
練習B応用発展練習を含む(担当する教師によって様々ですが、
例えば学習している文型を使っての導入練習、タスク、短作文など )
  ↓
練習C
  ↓
例 文①CDを聞く
②感情、身ぶり、手ぶり ☆第1回目のポイント!
③発表
  ↓
会 話
  ↓
問題(課末)


初級を進めていて学生からよく言われていたのが「先生、この会話はいつ使いますか?」「店やテレビで聞く日本語と全然違います」というものでした。確かに、練習BやCを使って会話の練習はしますが、実際学生たちが日常生活やテレビで聞くようなものとは違い、あくまでも既習文法を会話にした場合のものです。そのままの会話は耳にすることもほとんどないでしょう。実際の会話は学習者自身が既習語彙や文法を、場面に合わせて応用し使わなければならないのです。今回の連載では、実際の対人関係やドラマ・アニメの中で話されているいきいきとした会話ができるような楽しい教科書の活用方法を紹介したいと思います。

1.「例文」の暗記テスト
会話力を向上させるにはどうしたらいいのでしょうか。場面に合わせて、ぱっと言葉が出てくるというのが理想的だと思います。私の学校で取り組んだのは、教科書の中にある「例文」を暗記するというものでした。教科書の中でより日常耳にする日本語に近いものは「例文」だと思います。CDを聞くとわかると思いますが、なかなかスピードが速く、日本人のナチュラルスピードに近いものになっています。「例文」は短いですが、様々なパターンがあり、例えば「依頼/断り」「苦情/謝罪」など、会話の機能を考える上でも重要なものとなっています。(この会話の機能は能力試験でも出題されています。)

暗記テストは比較的日本語に慣れてきた『みんなの日本語初級Ⅱ』に入った段階あたりから始めました。まず、練習Cまで終わったところで、「例文」のCDを聞き、場面を想像させながらリピート練習をします。この際、感情をこめられる部分があれば、少し恥ずかしくても、まず教師が感情をこめて、ジェスチャーも付けながら読むのが重要です。そうすることで、単調なリピート練習とは違い、より場面が想像しやすく、学生の印象に残ります。

次に、「例文」を暗記させます。時間がかかる学生もいるので、宿題として何日の何時間目と指定しておいたほうがいいでしょう。

「例文」は会話形式なので、テストの際に、くじ引きで2人組を作りました。片方のセリフは言わなくてもいいことにしました。そして発表はみんなの前に出て、できるだけ感情を入れてみたり、身振り・手振りを付けながら最初の例文から最後まで続けてやってもらいました。例文は毎回8つほどのパターンがありますが、1番から順に得意な学生と苦手な学生、ノリのいい学生と悪い学生がいるので、できるだけいろいろな相手と組ませることによって学生同士で意欲や培ってきた日本語力を引き出し合えるといいと思います。最初は恥ずかしがったり、戸惑う学生も多いと思いますが、そんな時は教師が学生とペアになって、一番最初に発表するといい見本になります。

いくつかおもしろい練習になる例文を紹介します。
だめだ。 もう 走れない。
・・・頑張れ。 あと 1,000メートルだ。
              (33課 例文1)
もう 時間が ない。
・・・まだ 1分 ある。 あきらめるな。 ファイト!
                     (33課 例文2)
この例文は、気持ちを込めずにはいられません。

どう したんですか。
・・・だれかに 傘を まちがえられたんですよ。
                    (37課 例文2)
泣いて いるんですか。
・・・いいえ、 笑いすぎて、 涙が 出たんです。
                    (44課 例文1)
例文を言う前に、ちょっとした演技が必要になります。

もう 夜 遅いですから、 静かに して いただけませんか。
・・・はい。 すみません。
                             (44課 例文5)
怒りの感情の入れ方が人によって違います。静かに怒りの感情を込める学生、どこで耳にしているんだか、怒鳴るように言う学生…。

わたしたちが 初めて 会ったのは いつか、 覚えて いますか。
・・・昔の ことは もう 忘れて しまいました。
                                (40課 例文3)
できれば男女のペアで発表させたい例文です。

初めて 好きに なった 人の ことを 覚えて いますか。
・・・ええ。  彼女に 初めて 会ったのは 小学校の 教室です。
  彼女は 音楽の先生でした。
                                (38課 例文6)
これはかなり上級者向きです。思い出すように、遠い目で。実際この部分を練習した時は、学生はアドリブで「彼女は日本語学校の先生でした」という文に変えて言い、授業は大いに盛り上がりました。暗記テストに慣れてくると、学生たちはこのようにアドリブを入れるようになってきました。アドリブを入れるということは、その会話の場面を想定して、応用ができるということです。このアドリブは、学生側から自然に出ればもちろんいいですが、教師側から促すこともできます。

次回はこの例文の暗記テストの応用編を紹介します。